Precious Metal Price Trends

貴金属の価格動向

何が価格を動かした?

貴金属価格は世界の様々な情勢によって推移しています。
この複雑なマーケットを読み、総合的に判断して、売り買いを行うことが「トレーダー」の役割です。
田中貴金属工業のトレーダーが、2020年12月から2021年5月にかけての金・プラチナ・銀価格の動向を振り返ってみました。

金価格の動き

金価格の動き

2020年12月以降の金相場は、米国の新型コロナウイルス感染者数が12月末をピークに減少に向かう中で、感染拡大に伴う経済停滞の影響を考察するという状況から、米国の経済対策によってもたらされる米長期債利回りやドルの騰落へと市場の意識が移り変わっていく展開となった。
昨年末は27日に米国でおよそ9,000億ドルもの追加経済対策法案が成立したことや、連邦公開市場委員会(FOMC)において政策金利が据え置かれたことで、ドル安が進行し金相場は1,900ドルを突破し上昇基調の中で年を越えた。
年初早々は昨年末までの流れを引き継ぎ1,950ドル近辺まで上昇するも、その後米10年債利回りが1%を超える水準へと急騰。この流れを受けてドル買いが大幅に進み、1,850ドル近辺まで急反落した。その後も新型コロナウイルスに対するワクチン接種の進展や米国での追加経済対策法案成立を材料とした米長期債利回りの上昇が続いたことで、ドル高の市況は継続し金相場は1,800ドルを割り込むと、3月に米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は講演で、最大雇用に達するまでゼロ金利政策を維持する考えを示すと共に、長期金利急騰に対して懸念を示す発言がなされなかったことから一層のドル高となり一時は1,685ドル近辺まで下落する展開となった。
3月後半からは、米長期債利回りの上昇は頭打ちとなったが、米国経済への本格的な経済活動再開観測が高まると、物価上昇への警戒感がぬぐえない中で、米連邦準備理事会(FRB)の低金利を継続する姿勢でドル安が再び進み、金相場は反発に転じた。この流れの中で投機筋の買いも巻き込まれることとなり、年始のレベルである1,800ドル台を回復し、1,900ドルを伺う展開となった。

プラチナ価格の動き

プラチナ価格の動き

2020年12月以降のプラチナは、昨年末より生産の懸念があった南アフリカの大手鉱山会社の精錬施設改修が早期に完了する見立てが示されて供給懸念が後退したことから、年末年始にかけては1,100ドルを挟んでの小動きの展開となった。
その後は米国で進むワクチン接種と感染者数の減少を背景に、経済活動の再開から需要拡大の期待感が強まると、特に自動車関連需要で高値の続くパラジウムからプラチナへ回帰するのでは、という期待感も巻き込んで投機筋を中心に買われて2月には騰勢を強め、2014年以来7年ぶりとなる一時1,300ドル台まで上昇した。
しかし、米長期債利回りの上昇を背景としたドル高が進む中で投機家の関心が株式等に移るにつれて値を崩すこととなり、3月には一時1,200ドルを割り込むまで下落した。
その後は米国の好調な経済指標を受けた米株式市場の上昇による産業需要回復の期待感から下落時は買われた。一方、利上げ警戒などから1,200ドル台後半では割高感から売られるという形で1,200ドルを挟んだレンジ相場を形成して推移することとなった。

銀価格の動き

銀価格の動き

2020年12月以降の銀相場は、中国経済指標が市場予想を上回る内容だったことで、世界中が新型コロナウイルス感染拡大による経済活動の停滞を強いられる中、中国では早期に復活したとの見方が高まった。これにより、銅をはじめとする非鉄金属の需要が高まり、銀にも工業用需要としての側面から資金が流入し、上昇基調が続いて、26.70ドル近辺で越年した。
年初は、市場予想を上回る中国経済指標と米国による追加経済対策を背景としたドル高からレンジ相場を形成する展開となった。しかし、インターネットのコミュニケーションサイト上で銀鉱山株や銀の上場投資信託の購入を呼びかける投稿が出たために煽られる形となり、米先物市場を中心に買われると、銀相場は一時30.00ドル近辺まで上昇した。しかし、米先物取引所が証拠金を引き上げたことで買いは続かず、下落に転じて27.00ドル近辺まで値を戻した。その後も、米国での追加経済対策成立への期待感を材料とした米長期債利回りの上昇によるドル高から上げ幅を縮小し、一時24.00ドル近辺まで続落する展開を見せた。
4月以降は経済活動の再開に伴って堅調な非鉄相場などを背景に工業用需要の側面が強く意識される展開となり、再び買い戻されて、28.00ドル近辺での推移となった。