Precious Metal Price Trends
貴金属の価格動向
何が価格を動かした?
貴金属価格は世界の様々な情勢によって推移しています。
この複雑なマーケットを読み、総合的に判断して、売り買いを執行することが「トレーダー」の役割です。
田中貴金属工業のトレーダーが、2020年6月から11月にかけての金・プラチナ・銀価格の動向を振り返ってみました。
金価格の動き
6月以降の金価格は、それまでと同様に新型コロナウイルス関連の報道を材料とした値動きに終始する展開となりました。
これまで低調だった米雇用統計も5月以降は徐々に回復への兆しをみせ、その他経済指標も強弱まちまちながら底堅さが意識される内容だったことで、それまでの上昇基調が一服する局面もみられました。しかし、トランプ米大統領が新型コロナウイルスの原因は中国にあるとの発言をするなど、激化する米中対立構造に下支えされる展開が継続しました。その後、FRB(米連邦準備制度理事会)が低金利政策を2023年ごろまで維持する方針を示したことで価格は押し上げられ、1,800ドル近辺まで上昇する形となりました。
8月にかけては、新型コロナウイルス感染拡大が世界的に収束しないことに加え、米中両総領事館閉鎖を巡る米中対立の激化懸念や、米4月~6月四半期GDPが過去最悪のマイナス成長となったことで2,000ドルを試す展開となり、8月初週には史上最高値となる2,070ドル近辺まで上昇しました。
その後、急激な上昇に対する利益確定の売りや、新型コロナウイルス感染症に対する治療薬開発への期待感の高まりを受け2,000ドルの大台を割り込み1,910ドル近辺まで急落すると、9月には世界的な大手銀行の不正取引に関する報道を材料とした米株価の大幅な下落を背景に、株式の損失補填に対する換金売りにより1,850ドル近辺まで続落する展開となりました。
その後は、トランプ米大統領が追加経済対策を大統領選後に本格的に再開するとの発言をしたことなどから、市場の注目は11月の米大統領選に当てられることになり、1,900ドルを挟んでのレンジ相場を形成しました。
注目されていた大統領選挙において、民主党バイデン氏の勝利が確実視され、今後の米国における新型コロナウイルス感染症への対策方針や、対外的な政治姿勢がトランプ氏からどのように変わっていくのかに注目が集まっています。
プラチナ価格の動き
6月以降のプラチナ価格は、それまでと同様に新型コロナウイルス感染症拡大に伴う実体経済への影響懸念から上値の重い展開が続きました。しかし、7月に入ると同感染症が依然として猛威を振るう中、EU首脳会議で注目されていた復興基金案が合意されると対ユーロでドル安が急速に進み、およそ4カ月ぶりに900ドルを回復しました。また、同ウイルス感染症に対するワクチン開発への期待感が欧米株式を押し上げると一時1,000ドルを突破しました。
しかし、米中対立が再燃したことで経済の先行きに対する不透明感が強まり、中華圏の長期休暇を前にした利益確定売りが重なると830ドル近辺まで反落しました。
11月にかけては、米大統領選挙に注目が集まる中で900ドルを挟む水準で推移すると、同選挙では民主党のバイデン氏の勝利が確実視されることで、大規模な追加経済対策への期待感から底堅い展開が続いています。
今後は、同氏が対中国政策にどのような舵取りをするかに注目が集まります。
銀価格の動き
6月以降の銀価格は、米中関係の悪化に伴い上値が重い展開が続くも、経済活動が微速ながらも回復基調にあることが好感され18.00ドルを挟んで推移すると、8月にかけてEU首脳会議において復興基金案が合意されたことによる対ユーロでのドル安や新型コロナウイルス感染症拡大を材料に値を伸ばす金価格につられ28.30ドル近辺まで上昇しました。
その後、利益確定の売りや、世界的な大手銀行の不透明取引報道を材料とした米株式市場の下落を背景に22.00ドル近辺まで下落しました。その後は、トランプ米大統領の新型コロナウイルス陽性反応報道や市場予想を下回る米経済指標の結果を背景に価格を押し上げる金価格になびく展開となるも、欧州圏での新型コロナウイルス感染拡大が上値を重くし24.00ドルを挟んで推移しました。
そして、11月には米大統領選挙が実施されバイデン氏の勝利が確実視され、今後の対中政策の舵取りについて、トランプ政権とはどう一線を画すのかが注目されます。