Precious Metal Price Trends
貴金属の価格動向
何が価格を動かした?
貴金属価格は世界の様々な情勢によって推移しています。
この複雑なマーケットを読み、総合的に判断して、売り買いを執行することが「トレーダー」の役割です。
田中貴金属工業のトレーダーが、2019年12月から2020年5月にかけての金・プラチナ・銀価格の動向を振り返ってみました。
金価格の動き
2020年1月中旬頃まではさまざまな経済活動や地政学的リスクが意識される相場展開となりましたが、同月後半から現在に至るまでは新型コロナウイルスの感染拡大が相場変動の中心要因となりました。
2019年12月以降の金相場は、難航する米中通商協議を背景に堅調に推移するなか、FRB(米連邦準備制度理事会)は今後の米国経済に対して先行き懸念が後退しているとしたものの現状維持が発表されました。年明けには米国とイランによる軍事的衝突を背景に1,600ドルを突破すると、1月後半から新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るいはじめたためにリスク回避の動きが強まり相場を押し上げる展開となりました。当初、中国国内の感染拡大により、中国経済への影響懸念が台頭していましたが、旧正月以降は韓国、日本、欧州、その後米国へと急速な拡大を見せだしたことから世界的な実体経済への影響が意識されはじめ、一時1,680ドル近辺まで急騰しました。その後、米国株急落を中心とする世界的株安により手元資金の確保から大幅に売られ1,470ドル近辺まで急落する展開となったものの、欧米諸国が相次いでロックダウンを断行したことや、大手精錬会社が新型コロナウイルスの感染拡大を警戒して操業を停止した為に、先物市場においての現物の引渡しが難しくなるなど、世界的な停滞状況が拡大しました。これにより、世界各国は感染拡大による経済への影響を小さくするために、さまざまな経済対策案を打ち出しました。その余波により金相場は1,650ドル近辺まで値を戻す展開となりました。
4月以降は、中国や欧米諸国においても感染者数が頭打ちを見せはじめたとの見方が示されたことで、徐々に経済活動が再開されつつあるも、米失業保険の申請件数などは記録的な結果となっており、実体経済への影響は一層広がりを見せているために、1,700ドルを突破するまで上昇する展開となっています。
プラチナ価格の動き
2019年12月からのプラチナ相場は、南アフリカにおける電力問題を背景とした供給懸念の台頭から堅調に推移するも、依然として出口の見えない米中通商協議の影響から上値の重い展開が続きました。年明けは、米国とイランにおける軍事衝突を背景とした金相場の上昇に連れ高となったことに加え、米中通商協議の「第一段階」が合意されるとの見通しが示されたために一時1,020ドル近辺まで上昇しました。
しかし、1月末日頃からはそれまで中国国内のみでの感染と思われてきた新型コロナウイルスが、欧米諸国にも感染への広がりを見せはじめたことで、世界的な経済後退懸念が高まり一転して軟調に推移すると、世界的な同時株安に伴う手元資金の確保の動き等も加わり一時600ドルを割り込むまでも下落しました。
その後は日本を中心に安値拾いの買いが入りサポートされたほか、新型コロナウイルスへの影響を背景に南アフリカにおいても外出規制等が発令されたことで供給懸念が台頭し800ドル近辺まで回復。4月以降にかけて低調ながらも回復を見せ始める実体経済に対しての期待感から堅調に推移しています。
銀価格の動き
2019年12月以降の銀相場は、米中通商協議が難航していることを背景とした金相場の上昇に連れ高となると、米国とイランによる軍事衝突を背景とした地政学的リスクの高まりにより18.00ドルを突破するまで上昇する展開となりました。しかし、中国国内で猛威を振るいはじめた新型コロナウイルスによる同国国内の実需の減速が意識され反落すると、その後は同ウイルスが世界的に広がりを見せはじめたことで16.00ドルを割り込むまで続落しました。加えて、世界的同時株安による混乱から手元資金の確保を背景とした金相場の下落や産業活動の停滞による需要の減少が意識される展開となり、一時12.00ドルを割り込むまで下落しました。
しかし、急激な下落に対しての安値拾いの買いや、急騰する金相場に対しての割安感からも投機資金が流入した為に15.00ドルを回復すると、5月以降は中国国内での経済活動が一部再開しはじめたことや金相場と比較した割安感が欧米を中心に意識され、17.00ドルを回復するまでになりました。