Precious Metal Price Trends
貴金属の価格動向
何が価格を動かした?
貴金属価格は世界の様々な情勢によって推移しています。
この複雑なマーケットを読み、総合的に判断して、売り買いを執行することが「トレーダー」の役割です。
田中貴金属工業のトレーダーが、2019年6月から11月にかけての金・プラチナ・銀価格の動向を振り返ってみました。
金価格の動き
2019年6月以降の金相場は1,330ドル近辺から一時は1,500ドル台へと上昇する展開となりました。難航する米中通商協議の影響が実経済に影響を及ぼすのではないかとの見方が強まったことが背景にありました。この結果、投資家の貴金属市場や債券市場へと資金を流入させ資産を保全しようとする動きが強まり、金価格の上昇や、米長期金利の下落などを引き起こしました。この状況を憂慮したFRB(米連邦準備制度理事会)は、予防的な措置としての利下げを7月に実施。その後も不透明な世界の情勢を理由として、9月、10月と2019年に3度の利下げを実施することとなりました。
また、米中通商協議においても、関税の応酬が発表され、出口の見えない状況が続きました。このような状況により金相場がしっかりと支えられました。米国が利下げを実施した結果、米経済は下支えされ米株式が最高値を更新するなど経済的に明るい報道が聞かれましたが、漠然とした世界の不透明感はぬぐえず、2019年後半にかけても1,400ドル台後半の価格帯を維持することとなりました。経済的な側面以外でも、香港で発生した犯罪容疑者の中国本土への引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案に対するデモ活動や、米国とイランの関係悪化に伴うホルムズ海峡近くオマーン湾での石油タンカー襲撃事件なども世界的に先行きの見通しがつきにくい情況を作り出しました。また、2019年の金相場の特徴として不透明な状況を裏付けるように各国中央銀行が外貨準備としての金購入を継続したことも、底堅い相場展開となった要因であったと考えられます。
プラチナ価格の動き
金相場と同様にプラチナ相場も2019年6月の800ドル近辺から、軒並み市場予想を下回る米経済指標の結果を材料としたドル安やFRB(米連邦準備制度理事会)による利下げ観測の高まりを背景とした金相場の上昇に追随し、850ドルを回復する展開となりました。また、2019年後半に行われる主要生産国である南アフリカの鉱山会社と労働者間で行われる労使交渉の行方なども意識されると、金に比べての割安感が強かったプラチナにも資金が流入し、950ドルを突破するまで上昇しました。
しかし、産業需要が中心であるプラチナは欧州自動車販売台数が継続的に前年比を割り込み続ける状況などが報じられると、供給過剰の需給構造が意識されて再び900ドルを割り込むまで下落しました。世界的な経済の先行きの見通しのつきにくさが価格に大きく重石となったと思われます。ただし足元では米中協議が進展していることへの期待感や米国の利下げの影響などで、米経済が底堅く推移していることから、投機的な資金が再び入り始め、900ドル台を回復しています。
銀価格の動き
銀相場は、悪い米経済指標を背景としたドル安から堅調に推移すると、15ドル近辺から16ドルを突破するまで上昇しました。その後も激化する米中通商問題を背景とした金相場の上昇につられる形で2016年以来となる19.60ドル近辺まで続伸する展開となりました。
しかし、20ドルの大台を前にすると投機家の利益確定の売りに押される展開となり下落しました。2019年9月以降にかけては引き続き具体的な進展のない米中通商問題の各報道に左右されたために狭いレンジで相場が推移しています。
金・プラチナ・銀価格に影響した
主な出来事
2019年6月 |
●中国が約600億ドル規模の追加関税を最大25%に引き上げ。 ●香港にて犯罪容疑者の中国本土への引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正案に対するデモ活動が発生。 ●ホルムズ海峡近くのオマーン湾でタンカー2隻が攻撃。 |
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7月 | ●米FRBが0.25%利下げ(1回目)。 |
8月 |
●新興国が相次いで利下げを発表。 ●米国が中国製品に対し10%の制裁関税を課す、中国政府も報復関税で対抗。 ●米国の10年債利回りと2年債利回りの逆転現象が発生。 |
9月 | ●サウジアラビアの国営石油施設が攻撃を受ける。 ● 米FRBが0.25%利下げ(2回目)。 |
10月 | ●米FRBが0.25%利下げ(3回目)。 |