Precious Metal Price Trends

貴金属の価格動向

何が価格を動かした?

貴金属価格は世界の様々な情勢によって推移しています。
この複雑なマーケットを読み、総合的に判断して、売り買いを執行することが「トレーダー」の役割です。
田中貴金属工業のトレーダーが、2024年12月から2025年5月にかけての金・プラチナ価格の動向を振り返ります。

金価格の動き

金価格の動き

2024年12月、2,630ドル台半ばでスタートした金相場は、中国政府が外貨準備としての金購入を7か月ぶりに再開との報道を受けて上昇基調になったほか、12月中旬のFOMC(米連邦公開市場委員会)での利下げが確実視される中でドルが軟調となったことが追い風となり、金相場は2,730ドル近辺まで上昇した。会合では予想通り0.25%の利下げは実施されたが、その後物価の高止まりを示す経済指標が発表されたことで、将来の米利下げに対する期待感が低下するとドルが強含んでいき、上値が抑えられる展開となり2,620ドル近辺で年を終えた。2025年に入るとトランプ氏の米大統領就任を控える中、就任後の関税政策の懸念が高まりを見せ、米国へ金現物を動かす動きが活発化、それに合わせて米国内での投機的な買いも加わり、就任前日には12月の高値である2,730ドル近辺まで値を上げた。トランプ米大統領の就任後、カナダ・メキシコ・中国に対しての関税を発表したことで株式市場が大きく下落すると、投機筋の損失補填の売りが金相場にも波及し2,600ドル台へ下げる場面も見られたが、関税による物価上昇やインフレ懸念の拡大などを背景に上昇基調を形成し2,800ドル近辺で1月を終えた。2月に入ると、就任直後に発表された関税のうちカナダ・メキシコへの対応延期を発表した一方で中国に対しては追加関税を発表、これを受け中国政府は米国に対して報復措置を発表した。米中間の貿易摩擦とそれに伴う経済的な先行きの不透明感が米国で強まると、ドルが主要通貨に対して下落。金相場は1月から続く上昇基調を継続する形で騰勢を強め、2月後半には一時2,950ドル近辺まで上昇した。3,000ドルの大台が見えてきたことやウクライナ情勢で一時的な停戦合意に向けた報道も散見され始めると投機筋の売りが強まり、2,850ドル近辺に下落した。3月に入ると、米国・ウクライナ間の首脳会談が不調に終わったことで、前述の停戦合意に対する期待感が後退。先送りされていたカナダ・メキシコへの関税賦課や、追加関税の話題を経て2,900ドル台を回復した。3月中旬に発表された2月の米消費者物価指数が物価上昇の鈍化を示したことで、利下げへの観測から金相場は一段高となり、3,000ドル台へ乗せることとなった。折しも中東情勢が不安定化したこともこの動きに拍車をかけ3月末には3,150ドルまで上昇した。4月に入ると、トランプ米大統領による相互関税導入の発表に動揺が走り、また中国の報復措置も報じられ、株式市場が急落する展開となった。金相場にも損失補填の売りが見られる状況となり、一時は3,000ドルを割り込む場面も見られた。ただ、米経済環境に対する不安などからドル売りが進行し、一部の国に対して追加の関税賦課を90日間停止するとの決定がなされると、金相場は3,000ドル割れの水準から一転して急騰する展開を見せ、一時3,500ドル近辺まで上昇するに至った。4月後半にかけてはドルが買い戻される展開となり、金相場は下押しされていき3,300ドル近辺で4月を終えた。5月に入ると、インド・パキスタン間の地政学的リスクが上昇し一時3,450ドル近辺まで上昇した。しかし、即時停戦合意に向かったことや米関税交渉で各国との合意形成がなされ始め、最も強硬的であった中国との交渉も進展が報じられるとドルが反発へと向かい始め、5月中旬現在、金相場は3,200ドル近辺を推移している。

プラチナ価格の動き

プラチナ価格の動き

2024年12月~2025年4月までのプラチナ相場は総じてこれまで意識されてきた価格レンジを大きく抜けることのない展開が続くこととなった。940ドル近辺でスタートした昨年12月のプラチナ相場は、FRB(米連邦準備制度理事会)議長の米経済に対する前向きな見方が示され960ドル近辺まで上昇した。その後はドル高やクリスマス、年末年始を控えたポジション調整の動きから投機筋の売りが見られて910ドル近辺に値を下げて年を終えた。2025年1月に入ると、トランプ氏の大統領就任後の関税政策に対する警戒感から米国へ地金を輸送する動きや需要の増加が見られ、これに応じる形でプラチナ相場は年末までの下落から反発することとなり970ドル近辺まで上昇した。トランプ米大統領就任後、カナダ・メキシコ・中国に対しての関税を発表し、これを受けて株式市場が大幅安となったことからプラチナ相場も950ドル近辺に下落したが、引き続き米国での高いプラチナ需要を受けて970ドル近辺へ値を戻す展開となった。2月に入ると、トランプ米大統領就任直後に発表された関税のうちカナダ・メキシコへの対応延期をした一方で、米国向けの需要を受けて一時1,000ドルを超える水準まで上昇した。しかし、投機家の利益確定の売りも活発化したことや、関税政策の影響に伴う景気減速も意識されて2月末には940ドル近辺へ下落した。3月に入ると、景気減速に対する懸念とドル安を背景に進む金相場の上昇の間で売り買いが交錯する展開が続き、二度1,000ドルを超える場面が見られたが、その水準を抜けるような勢いには乏しかった。4月にトランプ米大統領が各国に対する相互関税を発表すると、株式市場が急落し、市場の混乱の中でプラチナの売りも活発化し一時900ドルを割り込む水準まで下落した。しかし、この水準は直近のレンジの下限であり、またこのような状況下でドル安が進んだことで急速に切り返していくと、970ドル近辺まで値を戻して4月を終えた。5月に入ると、米中の貿易交渉に進展が見えたことで一時1,000ドルを超える展開も見せ、5月中旬現在は990ドルを挟んでのレンジ相場で推移している。